コミュニケーションBLOG

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高血糖や低血糖に影響を及ぼす要因とインスリンの調節方法

インスリン注射液のバイアルから注射器で薬液を吸い取っている写真

血糖を変動させる要因は、食べたもの以外にもたくさんあります。

成長や老化などの長期的なからだの変化や、1日の中でも生理的な変化が起こります。

今の血糖が何に影響されているのかを知ると、インスリンの増減を適切にコントロールしやすくなります。

1.思春期

 幼児期から増量されてゆくインスリン必要量は、思春期を過ぎた18歳頃がピークとなります。

その後は、24歳~30歳くらいまでの間にインスリンの減量が必要になってきます。

この間にインスリンの減量が不十分だと、低血糖を起こしたり肥満につながるので注意が必要です。

 年齢に応じた成長・発達に必要な栄養所要量が変化するので、その摂取量の増加に合わせて必要なインスリン量が増えます。

成長期を終えたら、年齢に応じた活動量に合わせて食事を摂るようにします。それに合わせて、インスリンの量も減らしてゆきます。

また、成長ホルモンはインスリンの働きを悪くするので、成長期にはインスリンの増量が必要になります。

2.暁現象:早朝空腹時の高血糖の原因①

 暁(あかつき)現象は、早朝空腹時の高血糖の原因のひとつです。

これは、インスリンの効果を減らしてしまう成長ホルモンやコルチゾールが引き起こす現象です。

人は、明け方に成長ホルモンとコルチゾールが多量に分泌されるため、インスリンの作用が弱められて早朝の空腹時血糖が高くなります。

一般的に暁現象を改善するためには、基礎インスリンの持効型インスリンが適しています。

また、基礎インスリンに中間型インスリンが合っている場合もあります。

就寝前の22時や23時~24時頃に中間型インスリン注射をすると、インスリンの効果のピークが暁現象の時間帯とピッタリ一致して、早朝空腹時の血糖を適切にコントロールできることがあります。

しかし、夕食前や21時頃に中間型インスリンを使うと、インスリンの効果が最大となる深夜に低血糖が起こりやすくなります。そのため、使用に際しては注意が必要です。

インスリンポンプを使っている場合は、暁現象を起こさないように、インスリンの注入量を細かくプログラムする必要があります。 

3.ソモジー効果:早朝空腹時の高血糖の原因②

ソモジー効果は、インスリンが過剰だった場合に深夜に低血糖を起こし、その低血糖の反動でインスリンを増やすホルモンが分泌されて血糖が上昇する現象です。

午前3~4時に血糖が下がり過ぎた反動で、早朝空腹時の血糖が高くなってしまう時には、夜食で血糖の下がり過ぎを予防したり、就寝前の中間型インスリンを減量して対応します。

4.朝寝坊

 仕事に行く毎日は、規則的に早起きしてインスリンと食事がほぼ一定なので、血糖も安定しています。

ところが、休みの日に遅くまで寝ていてインスリンも食事もなしの状態が長引くと、暁現象で高血糖が起こります。

この場合は高血糖を補正する追加インスリンが必要になるのですが、インスリンを追加しなくても、昼食前に自然に普通の血糖に戻ることがあります。

あわててインスリンを増量せずに、血糖の変化を観察してみることも必要です。

5.月経周期

 女性は卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)によって、体温が周期的に変化します。

卵胞期は基礎体温が低温相で、黄体期は高温相になります。この変化のサイクルを月経周期といいます。

1型糖尿病の女性は、生理が始まると血糖が下がり、排卵期の頃から血糖が高くなります。

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出典:(2)月経と血糖のふか〜い関係って? | . 糖尿病と女性のからだ | 糖尿病と女性のライフサポートネットワーク

この変化に対応するには、排卵の1週間くらい前からインスリンの量を増やしておき、2週間くらいで元のインスリン量に戻します。

個人差が大きいですが、女性ホルモンの影響で、血糖の変化だけでなく、甘いものが欲しくなったり食事をたくさん食べてしまうことが多いといわれています。

加齢とともに女性ホルモンの分泌が減ってくると、これらの影響も少なくなってくるでしょう。

6.激しい運動

 運動をすると、インスリンの効果が強くなります。これを、「インスリン感受性が高まる」あるいは「インスリン抵抗性が減弱する」といいます。

したがって、激しい運動をする時にはインスリンを減量する必要があります。

  • 朝食後3時間以内に運動する場合:朝食前のインスリンを減らす
  • 昼食前または昼食後に運動する場合:昼食前の追加インスリンもしくは朝の中間型インスリンを減らす
  • 夕食後の運動の場合:夕食前の追加インスリンを減らす

減らすインスリンの量は、運動量に応じて10~50%ほど減らします。必要ならば運動後のインスリンも減らします。

運動の種類や強さによって変わるし個人差も大きいので、あなたの場合はどうなのかを知っておくとよいでしょう。

毎日一定の運動を続けている場合には、インスリンの増減は必要ありません。

7.体重の変化

 太るとインスリンの効きが悪くなります。そのため、太ったらインスリンの量を増やさなければなりません。

たくさん食べるためにインスリンの量を増やすと、血糖は適正範囲にキープできます。

ところが、インスリンは別名「太るホルモン」とも呼ばれているように、量を増やすと結果的に太ることになります。

太るとインスリンの効果が悪くなるため、またインスリンの量を増やすという悪循環に陥る危険があります。

適正体重を維持することは、インスリンの量を増やさずに安定させるために重要です。

8.インスリンの注射部位:サイトローテーション

インスリンを同じ場所や近い場所に注射し続けると、注射した場所の皮膚にしこりができて硬くなります。

固くなったところに注射をすると、インスリンの吸収が悪くて効かなくなってしまいます。

ですから、3cm離れた場所に順番に注射をするようにします。1ヵ所に注射する間隔を1週間以上あけるようにしましょう。できれば、2~3週間あけられると素晴らしいです。

サイトローテーションというシートを活用して、うまく場所を変えていきましょう。

できてしまったしこりは、3ヵ月以上注射を避けておくと自然に吸収されてなくなります。

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出典:三杉内科スタッフのブログ: インスリン注射をされている方へ

皮下注射できる部位は、腹部(おへそ周りを5cm避けたおなか)、大腿外側(太ももの外側)、上腕外側(二の腕の外側)、臀部(お尻)です。

また、次のような順番でインスリンの吸収が速くなります。

  1. お腹
  2. 上腕の外側
  3. お尻
  4. 太ももの外側

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出典:糖尿病の治療薬-第8回 インスリン療法-その3|糖尿病特集サイト メディマグ

注射部位によってインスリンの吸収速度が違うので、毎回注射の部位を変えるのはよくありません。インスリンの効果にバラツキができてしまうからです。

それぞれの部位で可能な回数(10日~2週間程度)を続けてから、別の場所へ移るようにしましょう。

  • 痛くない所ばかりに注射をしないこと
  • 針を刺しにくい固い場所は避ける
  • 液漏れする場所も避ける 

こんな点にも注意してくださいね。

9.インスリン注射の針

 インスリン注射専用の針は、非常に細くて特殊なカットに加工されています。採血や普通の注射に使う針とは、全然違いますね。

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出典:インスリン治療 | 吉岡成人先生のウェブサイト

 針の太さはG(ゲージ)数で違います。インスリン用の注射針は30Gからあり、数字が大きくなるほど細くなっています。

下の写真は、医療機関で使われている普通の注射針です。

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出典:テルモ注射針|医療機器製品情報|テルモ 医療関係の皆様向け情報

ちなみに、献血用の針は17Gで一般に使用されている針よりも1ランク太い針です。

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出典:シリーズ広告「テルモの痛みへの挑戦」 企業広告|企業情報|テルモ

テルモ社製の「痛くない注射針」です。

針が細くなるほど痛くないのですが、薬液を注入する際の抵抗が強くなって注射しにくくなります。その問題を流体力学で解決し、職人の神業によって製品の加工が実現しました。

さらに、針のカット面を左右非対称にして皮膚を「切る」抵抗を減らして痛みを軽減することに成功し製品化を果たしたのです。 

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出典:注射針の種類

針の太さだけでなく針の長さにも種類があるので、体型や好み(使用感)に合わせて長さを選べます。

注射の痛みは、針を刺すときの痛みと、注射液がふくらんで神経を圧迫(押す)される痛みとがあります。

針を刺す痛みはほとんどないのですが、まれに皮膚の痛点(つうてん:痛みに敏感なポイント)に命中すると痛く感じます。この痛点は、目で見て探すことはできません。

注射液のふくらみの影響は、針が短くて浅いところほど神経を刺激します。

痛みを感じる神経が皮膚の表面にあるので、長い針の方が痛みがなく液漏れもしにくいのです。

針が短すぎると、液漏れが起きて血糖のコントロールに影響する場合があります。

 

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出典:糖尿病の治療薬-第8回 インスリン療法-その3|糖尿病特集サイト メディマグ

上図のように、注射部位をつまんで注射をするようにいわれていますが、つまんだままだと液漏れしやすいので、欧米ではつままずに注射することになっています。

針を刺すときだけは皮膚をつまんでもよいですが、インスリンを注入するときにはつままないように注意しましょう。

10.インスリン製剤

 インスリンの保管方法によって薬液が変質してしまい、効果が悪くなることがあります。以下のことに注意しましょう。

  • 製品の添付文書の指示に従って正しく取り扱う
  • 未開封の場合は冷蔵庫に保管(ドアポケットなど冷えすぎない場所)
  • 冷凍するとインスリンの結晶が変化する
  • 注射器にインスリンをセットしたら室温で保管(冷蔵庫ではインスリンが結晶化し故障の原因となる)
  • 高温や直射日光の当たる場所に放置しない
  • 凍った保冷材に直接触れさせない(運搬時の保冷材はタオルなどで包む)

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出典:糖尿病の治療薬-第8回 インスリン療法-その3|糖尿病特集サイト メディマグ

 インスリンの液の温度が低いほど吸収が速まります。注射する時は室温で使用します。

注射のあとは、もまないことが原則です。

インスリンには、無色透明のものと白っぽく濁ったものの2種類があります。

濁るタイプのものは、使う前によく混ぜ合わせて薬液を均一にする必要があります。

シャカシャカと忙しく振っても混ざりにくいので、手のひらをすり合わせて横に転がしてからゆっくりと上下を入れ替えることを数回繰り返して混ぜます。きちんと混ざっていることを必ず見て確認しましょう。

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出典:インスリン自己注射主義確認のしおり フレックスペン®編

 

※ランタス®とランタスXR®の違いは、薬液の濃度、使用量、吸収速度の違いがあります。

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出典:『ランタスXR』と『ランタス』、同じインスリン注射の違いは?~濃度を高めると、なぜ吸収が穏やかになるのか : お薬Q&A ~Fizz Drug Information~

11.シックデイ

 ちょっとした病気や体調不良などで、血糖コントロールがわるくなることがあります。

これを「シックデイ」(Sick day:病気の日)と呼びます。

高血糖になる場合と低血糖になる場合があります。

一般的には、具合が悪い場合にインスリンの効きが悪くなる傾向があり、食べられないからといってむやみにインスリンを減らすことはしません。

シックデイ・ルール

発熱・下痢・嘔吐や食欲不振の時や、抜歯などで思う様に食事を食べられない時には、以下のことについて注意しましょう。

  1. 主治医と連絡を取るか早めに受診する
  2. 安静にして保温する
  3. なるべく消化のよい炭水化物を少なくとも1日に100~150g以上の炭水化物を補給する(お粥や煮込みうどんなど)
  4. 水分は1日に最低1000ml以上摂る(味噌汁や野菜スープなどでミネラルも補給する)
  5. 自己血糖測定を行い、できれば尿ケトン体測定も行う
  6. 食べられないからといってインスリンを減量や中止しない(追加インスリンや混合型インスリンを使っている場合で食べる量が不安定な場合は食事の直後に注射する)

自己判断が難しい場合があるので、2~6について注意しながら遠慮なく主治医に連絡しましょう。可能であれば、受診します。症状によっては入院が必要になることもあります。

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出典:食べていないのに血糖値が急上昇! シックデイに注意/-第18回 低血糖に注意! 認知症とシックデイ/糖尿病特集サイト/メディマグ. 糖尿病

 以下に、超速効型インスリンの一般的な目安を紹介しますが、あなたの主治医の指示に従うことが原則です。自己判断はやめましょう。

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出典:インスリン使用マニュアル~安全に使用していただくために~改訂第3版さぬき市民病院

12.手洗い

 果物の皮むきなど糖分が手についてしまった時に、手を洗わずに血糖を測定すると影響が出る場合があります。

血糖測定の前には、できるだけ流水で手を洗いましょう。アルコールの消毒だけでは、影響が残ることがあります。

厚生労働省からのパンフレット

出典:PMDA医療安全情報(厚生労働省)

13.喫煙

タバコはインスリンの感受性を低下させ、抵抗性が高まることが解明されています。吸うタバコの本数に比例してインスリンの効果を悪くします。副流煙も同じように影響します。

喫煙で血管が収縮するので、皮下の吸収速度も遅くなります。

喫煙者は15~20%、ヘビースモーカーでは30%もインスリンの量を増やさなければなりません。

禁煙して太ったとしても、吸わない人が太った時のようにインスリンの感受性は低下しません。タバコをやめると、太ってもインスリンの使用量を減らすことができることが確認されています。

出典:「糖尿病の予防も治療も禁煙が大切です」大阪府立健康科学センター

 まとめ

血糖値に影響を及ぼすことをしっかり理解して、正しい対応ができるようになりましょう。

早朝空腹時の高血糖という事実をひとつみても、その原因はいくつも考えられるということです。

  • 前夜の食事の影響
  • 注射部位によるインスリンの吸収不良や液漏れ
  • インスリンの変質や混ぜ方の不足
  • 指に付着した糖分の影響
  • 暁現象やソモジー効果
  • 運動不足
  • まだ自覚していない体調不良(シックデイ) など

いろいろな可能性について知っておきましょう。

  1. 成長期
  2. 1日の生理的リズム(暁現象、ソモジー効果)
  3. 生活のリズム
  4. 月経周期
  5. 運動
  6. 体重の変化
  7. 注射の手技
  8. 注射針
  9. インスリン製剤の取り扱い
  10. シックデイ
  11. 自己血糖測定(SMBG)時の指に糖分付着
  12. 喫煙

 あわてずに判断しないこと、わからない時は主治医に相談することをお忘れなく。 

参考資料: 1型糖尿病のインスリン療法 患者さんたちのために

りょうこのつぶやきでした。

では、ごきげんよう。

アイキャッチ画像出典:【看護師の知識】インスリン注射のタイミングを間違ってしまう